2011年4月23日土曜日

IAISの「ALMイシューペーパー」を読む(7)

IAIS(保険監督者国際機構)作成の「ALMイシューペーパー」(「資産負債管理に関するイシューペーパー」(2006))を読む。<パラグラフ12からパラグラフ13>

パラグラフ12
保険および投資商品は継続的に新規開発、再設計、乗り換え、内容の充実、または更新されている。適切な限りにおいては、保険会社の資産負債管理のプロセスはプライシング、商品開発、および資産運用部門の互いに緊密な相互連携が確保されなければならない。保険契約者に提供される商品は、適切にプライシングされ、付随の投資戦略が適切になるようにその特性が十分理解されていなければならない。特に、明確な投資ベンチマークや戦略が設定されるべきである。
パラグラフ12からパラグラフ13は新契約の影響に関してである。「ALM基準」ではパラグラフ10に対応する部分だろうか。
(ALM基準)
10.新商品の開発過程において、その商品が資産負債管理にもたらす影響を考慮すべきである。例えば、新契約への対応のために必要とされる特性を備えた資産が十分に利用可能であるかということに関して、合理的な確証が必要である。ときには、資産負債管理への影響を勘案した結果、商品の販売を中止するという結論に至ることもあるだろう。
"保険契約者に提供される商品は、適切にプライシングされ"というのは運用に関する前提が適切に設定されているという意味だろう。
勿論、死亡率、発生率、解約率や事業費、販売計画等の前提無しに適切な運用の前提は成立しないので、結局はプライシングに関わる全てということにはなるかもしれない。それでも、発生率の保守性などはALMとは別物だと思う。
運用に関する前提とは算出方法書に定める予定利率の意味ではない。おそらくどの会社でもプライシングの際には様々な前提に基づいた将来のキャッシュフローの試算を行い、料率の妥当性を確認すると思うが、その際の運用利回り、デュレーション、必要な流動性などの意味である。

このパラグラフの要旨は、商品開発時からALMは意識しておけということ。


パラグラフ13

関連する新商品の特徴について、保険会社の資産運用部門は、将来キャッシュフローやソルベンシー要件を満たすような期間や特質を備え、必要な利回りをもたらすような資産が確保できるかどうか究明すべきである。加えて、これらの資産が継続して利用(確保)可能かどうかを考査すべきである。適切な資産が利用(確保)可能でない場合は、保険会社は永久的または一時的に、その要件を満たさない資産に置き換える必要があるだろう。但し、そのような場合には、利差益を生むのには不十分な利回りしか得られなかったり、保険料受け取りと投資開始へのタイムラグの発生などが発生し、保険会社は金利リスクに晒されることになる可能性がある。

パラグラフ12の続き的な内容。
商品開発時に、ALMの要件を満たす運用方法の実現可能/不可能について検討することは当然であるが、さらにその運用方法が将来的にも続けられるかどうかも考察しておく必要があるということ。
想定した運用方法が将来的に不可能になる例として、以下のようなものが思いつく。
・想定していた債券が発行されなくなった。あるいは発行数が激減した。
・新契約高が予想以上に膨らみ、想定していた市場の規模では思うように取引できなくなった。


ところでこの2パラグラフの内容も"保険引受リスク"と言うんだろうか。負債由来のリスクとは言いがたい気がするし、単にプライシング時の留意点というような気も・・・。

0 件のコメント:

コメントを投稿