2011年3月4日金曜日

「損保数理 第10章 リスク評価の数理」を読む(1)

アクチュアリー試験1次試験の指定テキスト『損保数理』に先日の改訂で追加された、第10章 リスク評価の数理を読む。

10.2.1 ブロック最大値モデル(前半)

確率変数「サンプル数を増やしていったときの、標本の最大値」 が従う確率分布についての小節。

というのがテキストの最初の主張であるが、これではcn、dnの選び方次第で(Mn - dn)/cnの収束先がフレシェ分布型になったりワイブル分布型になったりということがありえるのかも?、と思ってしまう。
実際はそんなことはなく、

A1.(Mn - dn)/cnが収束するならば、収束先の分布は上の3つの型のいずれかである
A2.(Mn - dn)/cnが収束するならば、収束先の分布型はcn、dnの取り方によらない

が成り立つ。
A2.についてはその直後に出てくる一般化極値分布の枠組みの中で、より強い形で表現される。

B1.(Mn - dn)/cnが収束するならば、収束先の分布は一般化極値分布(GEV)に属する
B2.(Mn - dn)/cnが収束し、収束先の分布をGEVの形で表現するとき、形状パラメータζの値はcn、dnの取り方によらない

A2.あるいはB2.により、各分布型およびパラメータαについての最大値吸引域{MDA(Φα)},{MDA(Ψα)},MDA(Λ)が排反な集合族であることがわかる。

#2011/3/7追記
後半部分の考察については記事を分けた。
Blog kon: 「損保数理 第10章 リスク評価の数理」を読む(2)

[B1の証明について]
10.5節にFisher-Tippettの定理として証明の概略があるが、若干手緩い。


とされているが、これだとたとえばH(x) = exp(exp(x)) 、γ(t) = 1、δ(t) = log(t) は(10.6)、(10.9)を満たすが、HはGEVでない。(そもそも分布関数でさえない。)
(10.6)、(10.9)を満たしたうえで、確率分布であることやXの定義域などの条件を踏まえると、GEVが導かれる、というのが正しいのだろう。

それはさておき、テキストで省略されている部分の導出。((10.6)、(10.9)の解として、の部分。)

[B2の証明]
10.5節で「型収束定理」として挙げられている命題(持っている本でもWEB検索でもこの名前が見当たらないのだが・・・)から簡単に導かれる。
すなわち、 (Mn - bn)/an、(Mn - dn)/cn がそれぞれH(x),G(x)に収束するとき、型収束定理よりあるγ、δがあってG(x) = H(γx + δ)。
よって、H(x)のGEV表現でのパラメータをζ、μ、σとすると、G(x)のGEV表現でのパラメータは(直接代入して計算して)ζ、(μ-δ)/γ、σ/γとなり、ζは不変である。■

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