2011年3月30日水曜日

「損保数理 第10章 リスク評価の数理」を読む(6)

アクチュアリー試験1次試験の指定テキスト『損保数理』に先日の改訂で追加された、第10章 リスク評価の数理を読む。


10.4.1 代表的なリスク尺度

VaRを基本に、それを修正したいくつかの指標について。


VaR(Value at Risk)はmin(x |F(x)≧α)とある。infで定義しないのは、F(x)が右連続であることを考慮したためかと思う。
パーセンタイル、と言われたほうが馴染みがあるのだが、なにか意味合いが違うのだろうか。使用目的?


TVaR(Tail VaR)、CTE(Conditional Tail Expectation)、CVaR(Conditional VaR)について、名はよく見かけるが、今まで違いがよく分からず、混同しているつもりでいた。
まさか同じものだったとは。区別できなくて当然であった。


CVaRのような指標が導入されてきた経緯や、その意味合いについてはテキストには詳しく書かれていないので、そのうち別の書籍等で確認しておきたい。
しかし、おそらく目的は、パーセンタイル方式のリスク量に、いくらかの上乗せを行う事であると思う。


実際VaRとCVaRではどれくらいの違いがあるものなのかを、いくつかの例で試してみた。
以下のグラフでは、横軸が信頼水準α、縦軸がF(CVaRα)の値である。つまり、CVaRの信頼水準αは、パーセンタイル方式(つまりVaR)ではどれくらいの信頼水準に相当するかということを示したグラフである。


1.正規分布
正規分布の場合、テキスト例10.15にあるとおり、F(CVaRα)は平均、標準偏差のパラメータによらない。
信頼水準80%のCVaRはおよそ91.9パーセンタイル、同じく90%のCVaRはおよそ96.0パーセンタイル、95%のCVaRはおよそ98.0パーセンタイル、99%のCVaRはおよそ99.6パーセンタイルに相当する。
αと100%の中間よりも少し上くらいの水準である。
なお、正規分布はexp(-x^2)の速度で減少していくため、テイルはあまり厚くない。


2.一様分布 
右端点、左端点によらず、F(CVaRα)は(1+α)/2となる。

信頼水準80%のCVaRは90.0パーセンタイル、同じく90%のCVaRは95.0パーセンタイル、95%のCVaRは97.5パーセンタイル、99%のCVaRは99.5パーセンタイルに相当する。


3.ガンマ分布
密度関数をx^(a-1) * exp(-x/b) / (b^a * Γ(a)) 、分布関数をF(x;a.b)とする。
実際に計算すると、F(CVaRα)はF[ ab/(1-α) *(1-F(Finv(α;a,b) ; a+1 ,b)) ]となり、これはbによらない。
グラフはa=3のものである。
信頼水準80%のCVaRはおよそ92.4パーセンタイル、同じく90%のCVaRはおよそ96.2パーセンタイル、95%のCVaRはおよそ98.1パーセンタイル、99%のCVaRはおよそ99.6パーセンタイルに相当する。
割増の度合いは正規分布とあまり変わらない。aを大きくすると、正規分布により近づく。


4.パレート分布
密度関数を(a/b) * (x/b)^(-a-1) とする。
実際に計算すると、F(CVaRα)は1-(a/(a-1))^(-a) + (a/(a-1))^(-a) * α となり、これはbによらない。
グラフはa=1.5のものである。
この時分散は無限大に発散しており、Tailはかなり厚い。
信頼水準80%のCVaRはおよそ96.2パーセンタイル、同じく90%のCVaRはおよそ98.1パーセンタイル、95%のCVaRはおよそ99.0パーセンタイル、99%のCVaRはおよそ99.8パーセンタイルに相当する。


上の数値を計算したEXCELファイルを置いておく。
CVaR.xlsx


#この節の(3)歪みリスク尺度 および、10.4.2節、10.4.3節はスキップします。(このブログ内に記事はありません。)

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