2011年5月28日土曜日

IAISの「ALMイシューペーパー」を読む(11)

IAIS(保険監督者国際機構)作成の「ALMイシューペーパー」(「資産負債管理に関するイシューペーパー」(2006))を読む。<パラグラフ28からパラグラフ32>

<パラグラフ28>
配当付保険、有配当保険
これらの商品は、保険契約者がリスクを分担し、当該保険契約からの利益配分を受けられるように設計されている。有配当生命保険に関する資産負債管理は、保険契約者の合理的な期待に基づいた将来の配当の前提を含むべきである。こうした配当は利率の変動や他のキャッシュフローを勘案すべく変更可能であるゆえ、無配当の商品区分と比較すると、投資の裁量の余地が大きい。しかしながら、保険会社は全面的な裁量を有するわけではなく、保険契約者が公平に扱われ、保険契約上の保証が適切にカバーされていることを示す必要があろう。さらに、保険契約者の期待および販売面の考慮は、リスクが顕在化した場合、保険会社が給付を減額するのを困難にする可能性もある。監督区域が、透明で明示的な保険契約者配当の扱い方の方向に動きつつあるため、資産負債管理はこうした問題を分析し、適切な資産配分を決定する際の格好の手法である。(訳注5)
 (訳注5)ここに書かれているような「投資の裁量の余地」が生じるためには、予定利率が相応に低くなっている必要があると考えられる。
"将来の配当の前提を含むべき"ということで、一節設けられている。
配当はたしかに名目的には運用の実績に連動するものなので、その意味では運用のリスクは少ないと言える。ただし、
・"保険契約者の期待および販売面の考慮"によって、運用利回りの低下に配当利回りを連動させられない場合
・運用利回りが予定利率を下回る場合
などはリスクになる。


<パラグラフ29>
ユニット・リンク商品および変額年金
一部の保険商品では、保険契約者の積立金と外部の株、債券市場、インデックスとがリンクしているものがある。資産負債管理は、契約した負債と推定的負債3に対応して持つ資産との間の相関関係について検証すべきである。これらの商品に対する監督当局のアプローチは場合により異なる。ある監督当局の場合は、こうした積立金の管理において資産負債管理リスクが存在しないことを要求する場合がある(例えば、ユニット・リンク負債が、できる限りそれにマッチした資産でカバーされることを要求するなど)。また、ある商品では満期時の支払を保証しているものがあり、その場合はさらに資産負債管理の対応が必要となる。
3 ここで言う推定的とは、規定の投資方針に従ってリンクしたファンドに投資するような潜在的な債務が存在するという意味である。
よく意味が分からないが、とりあえずパス。


<パラグラフ30>
定期保険
これらの商品は特定の期間における死亡保障を提供しており、通常、解約返戻金はない。保険会社は、これらの商品を資産負債管理モデルに含めるべきかどうか判断する必要がある。一般的には、保険期間が長期で相対的に大きめの契約負債を有する場合については資産負債管理モデルに含める必要がある。
"通常、解約返戻金はない":IAIS文書ではなんかそう言うことになっているイメージがある。ということは、それがグローバルスタンダード?
アメリカには標準不没収法があるため、無解約返戻金型商品は販売できないのかと思っていたが、違うのだろうか。そのうち確認しよう。

"保険期間が長期で相対的に大きめの契約負債を有する場合については資産負債管理モデルに含める必要がある"というのが典型例であるなら、「長期定期保険」とかにしてパラグラフ27(無配当長期生命保険)の中に入れてしまったら良かったんじゃないだろうか。

むしろ定期保険には、短期払込、一時払や、逓増定期保険などの論点があるように思うが、それこそ日本特有の話なのかもしれない。


<パラグラフ31>
傷害疾病保険
上述した定期保険ビジネスと同様に、就労不能生活資金や長期介護などの長期傷害疾病保険は、ある種の資産負債管理のモデル化を必要とする。
いわゆる医療保険のことも含むと思っていいのかな?
就労不能保険や長期介護保険に限らなくても、期間が長期の医療保険はそこそこ保険料積立金もあり、パラグラフ30と同様にALMの対象となりうる。
がん保険なんかだと、解約返戻金も高く、投資商品的な扱いを受けることもあり、なおさらだ。
「健康祝い金」などと呼ばれる無事故給付もある場合、普通の定期保険よりはやや複雑なモデルになる気もする。


<パラグラフ32>
損害保険
多くの損害保険商品は短期負債であり、流動性が資産負債管理の主要な検討事項となるが、対応する資産の適切な選択が重要になる場合がある。これらには、発生もしくは保険金支払いが完了するまでに複数年を要したり、その間に保険金インフレに伴い支払額が上昇するようなことが起こりうるロングテイル・ビジネスや、年金ビジネスと同様の考察が当てはまる賠償金年金払決済方式が含まれる。さらに、資産の適切なマッチングを選択することは、保険金の発生に伴い、その保険金支払いへの流動性を満たす継続的な保険料が存在しないランオフ・ベースの保険契約についても重要である。だらだらと長期化する裁判では、支払うべきクレーム高の不確実性が深刻なものとなり、流動性リスクを防止するために投資期間の短期化の必要性が生じる。
良く分からないのでパス。


ここまで、3.異なる商品区分への資産負債管理の適用の章であった。

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