2011年5月6日金曜日

IAISの「ALMイシューペーパー」を読む(8)

IAIS(保険監督者国際機構)作成の「ALMイシューペーパー」(「資産負債管理に関するイシューペーパー」(2006))を読む。<パラグラフ14からパラグラフ16>

パラグラフ14
流動性リスクとは、支払事由が発生した際、それに充当するためのキャッシュフローを負債に対応した資産の中で十分に用意できない場合に生じる損失の大きさのことである。このとき、保険会社は好ましくない価格で他の資産を売却せざるを得ない場合もある。保険会社の流動性特性は、資産と負債によって決定され、市場の環境に応じて変化する。
ここからパラグラフ22までは流動性リスクについて。

「ALM基準」では
21.流動性リスク:資産負債管理の観点では、流動性リスクとは、支払事由が発生した際、それに充当するためのキャッシュフローを負債に対応した資産の中で十分に用意できない場合に生じる損失の大きさのことである。このとき、保険会社は好ましくない価格で資産を売却せざるを得ない場合もある。保険会社の流動性の特性は、資産と負債によって決定され、市場の環境に応じて変化する。
となっている。
相変わらず表現が微妙に一致しないのは、原文のせいだろう。

あるタイミングで大量の養老保険が満期を迎えるとすれば、それに対応して満期を迎える債券を用意するなどの対応が取られるはずである。これは基礎的なALMであり、このパラグラフの内容に含まれる。
また、解約返戻金などの支払が予想をはるかに上回った場合などにも流動性リスクが発生する。

"負債に対応した資産の中で" というのは、変額保険や団体年金などの特別勘定/区分経理などを意識したものだろうか(外国でどうやっているのかよく知らないが)。


パラグラフ15
保険会社は、予測可能な範囲の即時の現金支払いに対応できるように、手元流動性を確保しておくべきである。現金が不足している場合は、いかなる即時の現金支払いもリスクとなり得る。管理の行き届いた保険会社は、支払義務が発生した際に、それをカバーするのに十分な現金および売却可能な有価証券を保有することで自社の資産を構成する。保険会社は、解約契約者への解約返戻金支払額に市場の悪化を反映させることで支払額を減少させることが出来るかもしれない。その結果、依然として資産を予想される負債のデュレーションに適合させることが出来るのである。さらに、時には保険契約者(少なくとも個人の生命保険契約者に対しては)への支払い時期を調整することが可能であるため、対応する資産が売却されるまでは支払いが行われない。
"時には保険契約者(少なくとも個人の生命保険契約者に対しては)への支払い時期を調整することが可能であるため、対応する資産が売却されるまでは支払いが行われない" というのが、例が思いつかない。外国ではよくあるのか?


パラグラフ16

以下の項目は、保険会社にとって流動性の問題を引き起こす潜在的な要因の一部である。
● 意図的なミスマッチング戦略
● グループ会社への投資リスク:関連グループのメンバー会社に投資された資金は流動化するのが困難であったり、そのグループ会社が保険会社の金融資源や事業資源を費消してしまうようなリスク。
● 資金調達リスク:保有資産に流動性がない時で、外部資金が必要な時期(例えば、予期せぬ巨額の保険金請求に対応する)に、保険会社が十分な外部資金を得られないリスク。
● 清算価値リスク:その時点で現金化すれば損失が出てしまうにも関わらず、予期せぬ時点または予期せぬ金額により、資産を現金化することが必要となるリスク。
● 否定的な評判(これは失効契約を増加させ得るだろう)
● 予想外の巨額の損失(費用)となる即時の支払い
● 再保険会社からの支払いの遅れ
● 保険契約者の行動
● 市場の変動性が異常に高いか、市場の緊迫による経済の悪化
● 規制や裁判所の裁定の予測不能な変化から生じる政治や法規上のリスク
● 他社との協力(取引)関係により売却できない投資
● 複数の保険会社が同時に巨額で予測不能な流動性の必要性に直面することにより、会社の資産ポートフォリオの一部を清算する必要性が生じる場合。その場合は、市場は好ましくない価格でしかこれらの資産の売却ニーズを吸収することができない結果となる。

"グループ会社への投資リスク:(略)そのグループ会社が保険会社の金融資源や事業資源を費消してしまうようなリスク。":これは流動性リスクとは違うような・・・。

"否定的な評判(これは失効契約を増加させ得るだろう)":外国での解約(surrender)と失効(lapse)の違いがよく分かっていないのだが、日本での用語法だとこれはむしろ解約契約を増加させる気がする。

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