2011年5月11日水曜日

IAISの「ALMイシューペーパー」を読む(9)

IAIS(保険監督者国際機構)作成の「ALMイシューペーパー」(「資産負債管理に関するイシューペーパー」(2006))を読む。<パラグラフ17からパラグラフ22>

パラグラフ17
保険会社は、予測される短期の負債のキャッシュフローに対応するように、資産を構築しなければならない。また、通常の予測を超える支払いにどう対応するか計画を立てなければならないが、それは追加の流動資産か、緊急時の外部融資プログラムなどを組む事によって対応する。
 緊急時の外部融資プログラムについては、パラグラフ19にも関連した説明がある。

パラグラフ18
保険会社の規模もしくは格付け、会社形態(相互会社など)、および/または現地の規制により、保険会社による資金調達の手段が制限されることがある。保険会社が小さすぎる場合は、より大きな保険会社にとって利用可能である資金調達方法が利用できない場合があるだろう。
"保険会社が小さすぎる場合は、より大きな保険会社にとって利用可能である資金調達方法が利用できない場合がある"については、意図していることがよく分からない。前半でも"保険会社の規模により資金調達の手段が制限されることがある"とあるのと重複していないか。
"小さすぎる"というところが重要なのかもしれない。海外では、日本では考えられないくらいの小規模な保険会社が存在すると聞いたことがある。

パラグラフ19
監督当局によって出された条件を満たし、規制上問題がなければ、借入れは保険会社の資産負債管理の重要な戦略となり得る。しかしながら、保険会社は借入れによる流動性確保をあてにすることにおいては慎重であるべきだ。例えば、銀行は保険リスクの顕在化事象(例えば、大災害または巨額な保険金の支払いなど)の後には保険会社への貸付に消極的となることがある。可能であれば、そのリスクを緩和することができるような正式な信用供与契約を確立しておくべきである。そのような信用供与契約は、極端な環境下におけるカウンターパーティの集中リスクを減少させるために、十分に分散化される必要がある。
外部の資金に依存した流動性の確保手段は、異常事態においても機能するか検証しておく必要がある。

パラグラフ20
負債または資本のいずれに関しても、商品、地理、業界、または債権者に関してポートフォリオの分散が不十分であると、流動性リスクの増加につながるおそれがある。不動産、取引の少ない証券または仕組み金融商品など、非流動資産への過度な集中は、特にリスクが高いだろう。
実際に流動性の問題が発生したとき、どのくらいの損失が起こるのかというのも重要である。
現金等をどれくらい持つかが流動性リスクの発生率に関わる問題だとすると、これは発生金額の問題として流動性リスクを増加させる。
・・・多分。

パラグラフ21
各保険会社は、流動性リスクに対する保険会社のエクスポージャーを決定するための適切な測定手法、例えば流動比率やキャッシュフロー・モデリングなどを選択すべきである。しかしながら、全ての保険会社で機能する単純な方式はない。さらなる詳細として、流動性測定法は、IAISの「投資リスク管理に関する指針(2004年)」において議論されている。
流動性リスクの測定は難しいようだ。

パラグラフ22
保険会社は、大災害の際、再保険契約の下で早期に現金を引き出すことにより、またはその他の方法により、緊急の流動性資金を得られるかもしれない。これは、求められる水準を満たすために利用可能である流動性の水準を評価する際に考慮され得るだろう。
これについても、パラグラフ19での指摘と同様の注意が必要であると思う。つまり、通常の予想を超える保険リスクが顕在化した際には、再保険会社においても流動性が不足し支払いが遅れたり、再保険会社が破綻して再保険金が受け取れない可能性もある。また、以降の再保険料率が大幅に引き上げられるかもしれない。

ここまで、流動性リスクについて。

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