2011年4月8日金曜日

IAISの「ALMイシューペーパー」を読む(2)

IAIS(保険監督者国際機構)作成の「ALMイシューペーパー」(「資産負債管理に関するイシューペーパー」(2006))を読む。<章構成、パラグラフ1からパラグラフ2>

章構成

「ALMイシューペーパー」は5つの章、78のパラグラフから成る。
各章はそれぞれいくつかの項目に分かれている。

1.はじめに(1-2)
2.資産負債管理の対象となるリスク
 市場リスク(3-8)
 保険引受リスク-保険契約者の行動(9-11)
 保険引受リスク―新契約の影響(12-13)
 流動性リスク(14-22)
3.異なる商品区分への資産負債管理の適用(23)
 積立型年金、据置年金(24)
 預託基金(25)
 支払年金、終身年金、即時(開始)年金(26)
 無配当長期生命保険(27)
 配当付保険、有配当保険(28)
 ユニット・リンク商品および変額年金(29)
 定期保険(30)
 傷害疾病保険(31)
 損害保険(32)
4.資産負債管理の測定手法(33)
 デュレーションとコンベクシティ(34-38)
 バリュー・アット・リスク(VaR)とテイル・バリュー・アット・リスク(Tail VaR)(39)
 流動性比率(40)
 キャッシュフロー・マネジメント(41-43)
 決定論的シナリオテスト(44-45)
 確率的シナリオテスト(46-51)
 ストレステスト(52-58)
5.資産負債管理の手法(59-60)
 ヘッジ(61-67)
 再保険(68-72)
 資産負債セグメントにわたるマッチング(73-75)
 長いデュレーションの負債(76-78)

※()内の数字はパラグラフの番号


パラグラフ1
本イシューペーパーの目的は、IAISの「資産負債管理に関する基準(2006)」(以下、「ALM基準」という)に、ALM(資産負債管理)に関する追加的な背景と詳細を補足することである。「ALM基準」で言及されているように、保険会社は、自社の特有な事業に最適なALM戦略と技法を選択すべきである。保険会社は、それぞれの方法論の選択により、リスクとリターン間の様々なトレードオフが生じることを認識する必要がある。例えば、短期の負債を有する損害保険会社は、短期のデュレーションを有する資産に投資するかもしれない。それによって、その損害保険会社はリスクを小さくできるが、一方でまた資産からの潜在的な収益をも減少させることになるだろう。
まずそもそもALM(asset-liability management;資産負債管理)とは何であるか。一般的に資産と負債を関連付けてマネジメントすることであるが、それではスコープが広すぎて手におえないので、通常はそのなかでポイントを絞ってモデル化あるいは制度化等を行う。
イシューペーパーでスコープとしている"ALM"については、「ALM基準」の1章、2章に定義や枠組みがあり、そこで
資産負債管理(ALM)は、資産と負債に関する経営上の意思決定や実際の行動が調和的になされているようにするための、経営管理の方法である。
資産負債管理は資産と負債の調和が必要とされるすべてのリスクを対象としている。とりわけ市場リスク(この中には金利や信用スプレッドリスク、外国為替リスク、株式リスク、ときには不動産リスクも含まれる)や保険引受リスク、流動性リスクが挙げられる。信用リスクはこれらのリスク管理の上で不可分といえるだろう(訳注3)。信用リスクのうち、保険会社の資産と負債の調和が必要とされる側面だけが、資産負債管理の範疇とみなされる。
等が記されている。
さらにイシューペーパーのスコープということになると上の引用の後者にあたり、資産、負債に関するリスクの測定方法および管理手法ということになる。

asset-liability managementの前身はasset-liability matchingであるというような話を見たことがある。ALMは資産と負債のデュレーションを合わせることから始まったという歴史的経緯を持つらしい。

ALMというのはおそらく実務に落とす段階ではある種のフレームワーク(あるいはフレームワーク群)になるのだろうが、このALMを要素に含むより大きなフレームワークの目標としてERMと呼ばれるものがあるそうだ。
逆に、ALMが要素に含んでいるフレームワークとして、資産のみの管理がある。資産サイドのみを考えたときの、リスクとリターンの最適解を求める、あるいはリスク管理する手法である。これについては個人投資のブーム以来、書店でも解説書をよく見かけるし、割に馴染みやすい考えである。伝統的には投資部門の分掌であったと思われる。
もう一つ、ALMが要素に含んでいるフレームワークとして、負債のみの管理がある。負債のみの管理、というと分かりにくいが、要は保険契約のリスク管理である。これはいわゆる伝統的なアクチュアリーの分掌である。
つまり、フレームワークという観点からALMを捉えた場合、ALMとは資産管理と負債管理を統合するものであり、ERMの一要素であると考えられる。


パラグラフ2
「ALM基準」で概要を述べた通り、資産負債管理を検討する際に、参照すべき多くのIAISの文書が存在し、以下があげられる。
「保険コア・プリンシプル (2003)」;
「保険会社の資産管理に関する基準 (1999); および
「投資リスク管理に関する指針(2004)」
保険会社の資産管理に関する基準 に閉じカッコ(」)が抜けているのは誤植と思われる。
参照すべき文書のラインナップは、「ALM基準」パラグラフ5,6と同じ。

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